アナモフィックレンズ徹底探求⑥ 「映画のような質感(シネマティック・ルック)」の魔法の源を解き明かす

投稿者 :柳原秀年 on

こんにちは、HORIZONの中でも、撮影機材大好きなチョウです。今回は、DZOFILMが誇るアナモフィックレンズ「PAVO」を深く掘り下げてみたいと思います。

第六章:DZOFILMのアナモフィックレンズ――PAVO

基本スペック
DZOFILMのPAVOシリーズは、Super35センサーに対応した2倍圧縮のアナモフィックレンズです。
·焦点距離:28 / 32 / 40 / 55 / 65 / 75 / 100 / 135 / 180mm の全9種類。(うち65mmはマクロ仕様)
·絞り羽根:28mmは14枚、その他は16枚。柔らかな楕円ボケを目指した設計です。
·イメージサークル:Super 35フォーマットをカバー。
28mm:フルフレームのオープンゲートモードでは顕著なケラレが見られますが、6:5のクロップモードでは使用可能です。
40mm:フルフレームのオープンゲートモードでも使用可能です。
75mm:フルフレームのオープンゲートモードを完璧にカバーします。
·サイズと重量:非常にコンパクトかつ軽量です。40mmレンズの実測重量は約1.3kgで、DJI Roninのような手持ちジンバルやスライダー、軽量三脚での運用に非常に適しています。
·フォーカスリング回転角:270度。精密なフォーカシングと手動操作のしやすさを見事に両立しています。
·マウントシステム:標準でPLマウントを採用していますが、ユーザーが交換可能なEFマウントも提供されており、柔軟な運用が可能です。

技術的な設計と分析

·フォーカスシステム:可変ディオプター方式を採用。これにより、レンズの主鏡筒(球面群とアナモフィック群)は固定され、最前面のレンズ群を移動させることでピントを合わせます。この現代的で効率的な設計により、小型化と「ムンプス現象」の回避を両立しています。副作用として、画面周辺部のボケが中心部に比べて整っておらず、わずかに「渦を巻く」ような描写になることがあります。
·フランジバック調整リング:レンズ後部に非常に実用的な調整リングが備わっており、ユーザーはシム調整なしで、現場で迅速にフランジバックの微調整が可能です。アナモフィックレンズはフランジバックに非常に敏感なため、異なるカメラボディやアダプターを使用する際にこの機能は大変重宝します。
·コーティング:PAVOはニュートラルコーティングとブルーコーティングの2種類を提供。ニュートラルコーティングは光源の色をそのまま反映した、柔らかく階層的なフレアを生み出します。一方、ブルーコーティングは古典的な青い水平フレアを生み出します。

個人的な感想

PAVOに初めて触れたときの印象は「抑制」でした。フレアは、従来のレンズのように画面の半分を覆うような派手なものではなく、光源に正対した際にクラシックなフレアが抑制的に発生する程度で、鑑賞の妨げになりません。これにより、芸術的な特徴は少し控えめになるものの、CMやMV、コンサートといった、より多くの商業的な現場で活用できるでしょう。それでいて、Arri Master Anamorphicのように「完璧」すぎて個性を失うこともありません。また、PAVOのコンパクトさと軽さは、DJIのスタビライザーに搭載できるという点で、より多くの制作チームにとって魅力的な選択肢となるはずです。


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